福岡の展示装飾・ディスプレイデザイン

ディスプレイデザインとは何か


last updated on April 27 2020
Ken Egami

1)ディスプレイデザインの基本的概念
 

visual communication
London's Natural History Museum (NHM)のHintze Hallに展示された長さ25.2mのシロナガスクジラの骨格。(2017)
just-picsによるPixabayからの画像
 
ディスプレイデザインの構図
 
ディスプレイデザインの構図
Ken Egami
 

 ディスプレイデザインは空間を使った情報伝達手法の一つである。公共空間、商空間、私的空間、宇宙空間など目に見えるあらゆる空間を使い、何らかの情報を伝えるために働きかける。これはディスプレイデザインの根本的説明だ。
 
1)空間とディスプレイ
 "空間とは何か"については古代から議論されてきたテーマであり、さまざまな説明があるので、「環境」という言葉を使った方がわかりやすい。公共環境には公開空地や街頭、公共施設、交通機関などのパブリックスペース、商環境にはショッピングモールやアーケード、商店、企業の施設といった産業に関わる場所などがある。私的環境でもディスプレイデザインは見られる。例えば、来客を迎えるための室内のイメージづくりやクリスマス時の飾り付けは、個人による情報発信である。宇宙空間は、今後の可能性であるが、例えば、小型人工衛星をつなげて文字やカタチをつくり、成層圏で発光させるスペース・アド構想がすでにある。もちろん僕らがそのような事業に関わることは決してないが、これもディスプレイデザインの範疇だといえるだろう。
 
2)情報とディスプレイ
 ディスプレイデザインの基本的概念を構成するもう一つの要素は「情報発信」である。しかし、情報という言葉は多義的だ。とりあえず『広辞苑』によれば「或ることがらについてのしらせ」「判断を下したり、行動を起こしたりするために必要な知識」とある。ディスプレイデザインを使った典型例は広告だが、それだけではない。街頭でのクリスマスの装飾は街を使ったムードを提供し、博物館では展示を通して知識を提供する。この情報の見解についても一様ではないに違いないので下記の解釈が正しいとは限らない。
 
(1)建築とディスプレイ情報
 空間を使って何かを建てたり表現するのであれば、ディスプレイデザイン以外の分野も含まれる。例えば、建築家の多くは人が住んだり集まるための建物を作る。いわば、コミュニケーションのための器を建てているのである。しかし、とても個性的な建物は、見る人に何らなの情報を発信し、コミュニケーションを成立させるかもしれない。サグラダ・ファミリアはガウディの建築構想をカタチにしようとしているが、あの個性的な装飾の建物を実際に見て、何も感じない人はいないだろう。好意、悪意、評価、批評であれ、何かを思うに違いない。
 

 
 だから、ガウディ不在であっても建物とのコミュニケーションが成立するので、ディスプレイデザインの要素を含む。しかし、サグラダ・ファミリアは、教会として建てられている。建築家の人たちが設計しているのは、一義的には人が住んだり、人が集まるための器だ。建築目的が情報発信を主としない点でディスプレイデザインとは異質である。もし二義的にそれがあったとしても、使う人、見る人によってその役割の度合いは違ってくるのかもしれない。
 
(2)モニュメントとディスプレイ情報
 モニュメントやオブジェはディプレイデザインの領域に入るかもしれない。モニュメントの語源は「思い出させる(remind)」「伝える (tell)」からきている。そして、優れたモニュメントとコミュニケーションは成立すると考えられる。
 しかし、アートスケープの『現代美術用語辞典』によれば、『永遠性、不変性、荘厳さなどのモニュメンタリティ(記念碑性)が備わっていなければ、モニュメントとして成立しない。』とある。これは、建築も含めてディスプレイデザインの特性の一つである「仮設性」と大きく関わる。よって、モニュメントとディスプレイのオブジェは切り離して考えなければならない。
 
 ディスプレイの多くは仮設性が高い。ディスプレイデザインとして建てられるオブジェはモニュメントではなく、具体的PRやムードづくりのために建てられる。だから、東京のお台場に建てられた2020のオブジェはディスプレイデザインの一つにすぎないのだが、「時の経過」とも関係し、やがてモニュメントになる可能性もあれば、木下直之氏が指摘する「ハリボテ」にもなり得る。これはディスプレイデザインの特徴の一つである「同時代」に影響している。
 
 ディスプレイデザインは、発案する時点で何か新しいモノ、同時代性のモノを求めている。しかし、時代の経過とともに共感を得なくなると、ハリボテらしさを発揮する。ハリボテはディスプレイデザインの一技法だ。木下直之氏は書き割りの宮殿ホテルやビルの屋上に建てられたエッフェル塔、金沢駅の巨大オブジェなどを「ハリボテ」コレクションとして集めた。僕らが見ても、実際にそう思うものばかりだ。それらは、今の時代、共感を得ない発想と技術でできている。そして、それに気づかれた時、壊される。ディスプレイデザインのオブジェの生き残る方法は、持久戦に持ち込んでレトロとしての評価を得るか、モニュメントになるかだ。関連記事「空間演出とディスプレイ」
 
(3)フラッシュモブとディスプレイ情報
 フラッシュモブはディスプレイデザインなのだろうか?ウィキペディアは「ゲリラパフォーマンス」の一種という。ゲリラ広告はディスプレイデザインの中でも低コスト・ハイパフォーマンス戦略の一つだから、無縁ではないように思える。そして、ディスプレイがイベント性を帯びるという特性にも紐付けられる。さらに「インターネット上や口コミで呼びかけた不特定多数の人々が申し合わせ、雑踏の中の歩行者を装って通りすがり、公共の場に集まり前触れなく突如としてパフォーマンスダンス演奏など)を行って、周囲の関心を引いたのち解散する行為」とある。すると「仮設性」と同じように「一過性」の性質もある。
 造形物はないのだけれど、フラッシュモブは人によるディプレイデザインといえそうだ。
 
◆総括
 いちいち、それがディスプレイデザインかどうか考えるのは意味がない。都市部の空間はディスプレイデザインに溢れている。そのほとんどは「見せる」ためである。「見せる」ことでコミュニケーションを図ろうという戦略だ。そして、見る側の受け止め方は一様ではない。ディスプレイデザインには「より良く見せる」アイデアと技術が必要だ。

30周年ロゴ
おかげさまで30周年

CONTACT US
TEL 090-9586-8621
FAX 092-406-8236
Fukuoka City
egami@esw-japan.com

  関連記事  


 

ディスプレイとは何か
1.ディスプレイデザインの基本的概念
2.ディスプレイデザインの領域
3.ディスプレイデザインの特性
4.ディスプレイデザインの優位性


展示会とは何か
1.展示会の解釈
2.展示会の源流
3.日本における近代的展示の始まり
4.産業の発達と博覧会
5.ディスプレイデザインの近代化


展示会と博物館

1.展示会

2.博物館

3.AR(拡張現実)

<記事>

・展示会とディスプレイ
・博物館編集とディスプレイ
・展示会におけるAR
・展示会のコマやブースとは何か
・展示会での分かりやすい表現
・展示会来場者の誘引方法
・展示会と企業ブランド
・基礎コマを使った簡易的なデザイン
・何度でも使える展示装飾
・展示会でのデジタルサイネージ


イベント

1.販促イベントの装飾

2.パブリックイベントの装飾

3.パレードの装飾

4.仮設ステージ

<記事>

・販促イベントとディスプレイ
・パブリックイベントと装飾
・パレードとディスプレイ
・仮設ステージとディスプレイ
・のぼりからわかること
・テントからわかること
・市販品の利用


空間演出

1.空間環境のディスプレイ

2.人工グリーン(植物)

3.什器製作


サイン

1.屋外広告

2.LEDサイン

3.デジタルサイネージ

4.特殊技巧