福岡の看板製作・サインデザイン

ディスプレイデザインにおける
デジタルサイネージ

Briefing for Display design
ken.Egami 2020/05/13

 「感染防止にマスクをしましょう!」という下手な字で書かれた、A3サイズくらいのマジック書きされた一枚の紙が駅構内の柱に張り出されているとしよう。その注意書きにどれだけ説得力があるだろうか?
 
 一方、その紙切れの画像を駅の柱に設置したデジタルサーネジを通して見せるだけで、下手書された紙切れはデザインされたものと見做され、行き交う人々は関心を示すに違いない。「電気回路は中枢神経系の延長である」と言ったのは、かのマクルーハンだ。ディスプレイを通すだけで完成されたものとして現実味を帯び、情報力を増す。有田焼の大壺の大判ポスターさえもディスプレイを通すと明るく浮かび上がり、見る人の神経を刺激させる。
 
 デジタルサーネージはテレビではないが、画面効果を持った看板である。日本語として電子看板という何だか時代遅れな名前があてがわれているが、「表示と通信にデジタル技術を活用して平面ディスプレイやプロジェクタなどによって映像や文字を表示する情報・広告媒体である」。デジタルサイネージにはさまざまな大きさがある。ビルの壁面を使った大型のLEDビジョンから、テレビモニター型の液晶タイプ、ハガキくらいのコンパクトなものである。一般的なテレビさえ、メディアプレイヤーを通すだけでデジタルサーネージとして利用できる。
 
 「4Kテレビが人をどれだけ幸福にするか?」と疑問を投げかけた人がいる。確かにそうだとは思うのだが、今になってアナログ放送の番組を見るのは辛い。デジタルになって幸せになったかどうかは分からないが、見やすくなったのは事実である。しかし、アナログ放送を見て、何の違和感もなかったのが不思議だ。同じように2000年ごろの大型LEDビジョンも現在のと比べものにならないものだったが、許容できていた。HIBINOのサイトによると、2006年のマドンナツアーに使われていた「STEALTH」というLEDビジョンのLED素子のピッチは25ミリだったという。現時点、NSSの扱っている屋内LEDビジョンの最小ピッチは1.667ミリというからとても見やすいに違いない。液晶タイプには4K(UHD)もあるそうだからHDよりも離れた距離から見えることになる。
 
 この「見やすい」というのは広告に向いている。脳に届く情報の90%は視覚によるものだ。(Hyerle 2000)よく見えることで見た人の脳はたくさんの情報処理をする。ディスプレイデザインと機器としてのディスプレイも"見せて脳を刺激する"という点において全く同根である。
 
 ところで個人差はあると思うが、大好きなタレントがテレビに映っているのを、大画面のUHD TV(4Kテレビ)で見ても普通のHD TVで見ても幸せはさほど変わらないだろう、と僕は思う。しかし、SAMSUNG NewsRoomによると、UHD TVとHD TVを見た場合、UHDの方が没入感が高まるという。バーチャルリアリティと同じように、対象に意識が注がれ他の事が気にならなくなる。これも一部の人にとっては幸せと言えるかもしれない。

サインボード

デジタルサイネージの編集

1)デジタルサイーネージの特徴
スタンドアローン型のデジタルサイーネージ
 デジタルサイーネージは映像やビジュアルといった情報を出力のための映像機器だが、サイネージ(signage=看板)とよばれるように、デジタル看板に特化した機器である。
 
 第一の特徴は機器へのデータ入力方法にある。かつて、映像データはVTRやDVDなどに記録され、専用の出力機器を通し映像機器で放映されていたが、デジタルサイネージのデータ出力はそれらの出力機器を必要としない。デジタルサイネージの内部に再生や変換機能などが組み込まれているからだ。そして多くはUSBメモリーを使いデータ入力される。
 
 第二の特徴は身近な編集ソフトが利用できる点である。映像データも専用のソフトで編集されるのだが、パワーポイントや専用の簡易ソフトを使った編集も可能となった。しかし、映像編集はほぼ従来の方法が無難である。
 
 第三の特徴はいくらでもデータの差し替えができる点だ。ポスターのような紙媒体のような印刷の必要がない。しかも、デジタルサイネージは紙媒体よりも明るく表示され、その質量には存在感がある。さらに、暗い場所での掲出は紙媒体にない特性である。
 
 第四の特徴は移動できる点である。スタンドアローン型や、専用のスタンドを使い設置する方法がある。もちろん壁面への固定も問題ない。また、液晶テレビのようなタイプのデジタルサイネージなら横型でも縦型であっても使用できる。デジタルサイネージには移動も含め、設置環境に合わせた配置方法が選べる特性がある。
 

デジタルサイネージフロー
 デジタルサイネージの特徴

 こうした特性から、駅や公共施設などではポスターからデジタルサイネージへほぼ移行しているが、ディスプレイデザインにおいても有効なツールの一つとなっている。特に展示会において、「明るい」「動く」「音声も出せる」といったデジタルサイネージの特性は極めて効果的である。

デジタルサイネージ縦型
スタンド縦型タイプ
 
デジタルサーネージ
 横にも縦にも使える壁型タイプ
 
USBメモリー
 
データの多くはUSBメモリー

2)デジタルサイーネージの有効性
デジタルサイネージはプリントPOPよりも注視時間が長い。
早稲田大学によるデジタルサイネージとプリントPOPを用いた「視覚的注意」の実験によると、デジタルサイネージの方が注視時間が長いという結果が出ている。(条件を一緒にするため、おそらく静止画同士の実験と思われる。)
 
「緑茶ドリンク」と「炭酸水ドリンク」の広告を使った実験だ。
<条件>
・左右に「緑茶ドリンク」と「炭酸水ドリンク」のPOP広告を並べる。
・POP広告の下にデジタルサイネージを置く。
・図柄は異なる

 
サイネージの実験
▲実験条件
サイネージの実験
▲実験結果
実験結果をグラフにしてみると、その違いは明らかだ。緑茶のデジタルサイネージの注視時間はPOPに比べて約2.74倍、炭酸水のだと2.42倍の長さの注視時間があった。
 
 それがなぜかは分からないが「電気回路は中枢神経の延長である」といったのは、かのマクルーハンだ。画面の明るさなのか?各々の人がPOPよりも画面を見るのに馴染んでいて、それを見るコツを得ているのか?
脳は視覚情報をテキストよりも約60,000倍早く処理できるという。(『3M Corporation 2001』)デジタルサイネージの横を通りかかっただけで、画像や映像は認識されるだろう。

3)デジタルサイネージの編集
 

(1)効果的な編集を図る
 デジタルサイネージの編集は、プロの編集者でなくても可能だ。前述したように、Power Pont、Keynote、iMovieといった汎用ソフトでも作成できる。プレゼンテーションと思えば誰でも作れるのだが、何を伝えるべきか、その長さはどのくらいが最適なのか、いらない情報は含まれていないか、伝える表現・・・、などの検討が欠かせない。
 しかし、デジタルサーネージ情報は多くの目に晒される。編集もまたアイデアの一つだが、マーケティングにおけるアイデアとは、他者があって成立する。これは、ブランド構築と同じ構図である。専門家への依頼を薦める。もちろん、弊社も問題がない。
 
(2)基本的な技術
 個人で編集するまでは良かったが、そのデータはデジタルサイネージで再生できるのか?動画ファイルのフォーマットは何が適しているのか?動画や音声のコーデックは?縦型の画角はどうする?・・・、といった基本的技術が欠かせない。
いろいろ悩むより、専門家への依頼を薦める。もちろん弊社も問題ない。
 
(3)映像の撮影
 写真撮影、スタジオ撮影、ロケも可能か?
いろいろ悩むより、専門家への依頼を薦める。もちろん弊社も問題ない。スタジオも用意できる。
 
(4)誰が編集するのか
 編集はその道のプロがいる。ただ単に映像や画像編集するのでなく、マーケティングにも通じている。できすぎるくらいだ。
リコメンド・・・ミキヤ

スタジオ
 
撮影
 
撮影セット

4)編集内容の種類

 デジタルサイネージに使えるデータ内容は3種類に分かれる。一つ目は静止画、二つ目はスライド、三つ目が動画だ。
 
 静止画は 文字通り動かないが、正確な情報を伝えることができる文字情報の掲出に適している。例えば、コロナウィルス対策として、マスク着用の推奨にも駅構内で使われた。
 
 二つ目のスライドはPower Pointでも編集できる。プレゼンテーションのデータ作成とほぼ同じ要領だ。
 
 三つ目の動画は、iphoneを含むiMovieでも製作可能だが、それにはそれなりのソフトでの編集をおオススメする。
 


5)簡易デジタルサーネージの作り方

 液晶テレビと同じ型のデジタルサイーネージの価格も落ち、手頃になっている。43型だが、現時点で7万円でお釣りがくる商品もある。サイズやメーカーを問わずにググればさらに格安なのもある。
 それでも既存の液晶テレビを使った方が良い時は、それを使っての製作もできる。
 <必要なもの>
・メディアプレイヤー・・・いろんな種類が売られているが、安価なものでもちゃんと機能するのがある。
液晶ディスプレイ(HDMI端子があるもの)
ブラケット・・・システムパネルの壁面に架ける方法もあるが、モニターの穴と金物が合うかどうか確認する必要がある。
・そのほかヤマトサイネージ
・モニタースタンド・・・こちらから 
 


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