福岡の展示装飾・ディスプレイデザイン

博物館のパネル展示と
ディスプレイデザイン

Briefing for Display design
ken.Egami 2020/05/10

 博物館等で開催される企画展示の中にはパネル展示も含まれる。展示品の説明もあれば、テキストだけで説明するなどさまざまだが、担当から送られてくる原稿の中には相当量の説明文が書かれている時もある。
 
 果たして来場者はこの説明を読んでくれるのだろうか?結論を先に言えば、長い文章のほとんどは読まれていない。なぜなら、来場者の多くは時間がないからである。よほど興味のある人以外、文章が嫌いのようである。Hein.G 1998の研究によれば来場者が説明を読むことはほとんどないという。 映像ですら訪問者の32%が関心を示すが、視聴に費やされた平均時間は137秒という調査結果もある。
 
 展示会も含めて、企画展等のパネル編集の業務も請け負っているのだが、読んでもらうには簡潔なテキスト編集は極めて重要なポイントだ。
 George A. Millerによる「Miller's Law」(もしくは「Miller's 7 bit-Rule」)はそれを示す。人間には、言葉や数字を短時間で処理できる能力が9から5の塊(7±2)までの間しかない。長い文章はできるだけブロック分けする必要があり、そのブロック数も限られているという意味だ。もちろんブロック数は少なく、文章も短い方が良い。これは、人間が短時間で長い文章を処理するのが苦手であることを示している。
 
 テキストや映像といった受動的展示よりも、触れたり体験できるハンズオン展示の方に興味を示すのは科学館等でしばしば見られる光景だ。もちろん多くのキュレーターたちは認識しており、展示の工夫やコミュニケーションを図る手法を提供している。
 例えば、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の「I went to MoMA and…」はシンプルは方法で博物館と来場者とのインタラクティブな関係を構築したとして評価されている。そのほか映像の中で体験できる仮想現実VRといったデジタル技術も活用されている。これはテキストや単なる映像と異なり能動的(アクティブ)であり、アミューズメント性も加え来場者を楽しませる。
 
 一方ではスマートフォン世代を意識した展示も少なくない。話を元に戻すと博物館のテキスト展示は大きく変わる可能性がある。その一つがAR(Augmented Reality=拡張現実)だ。例えば国立アメリカ自然史博物館デモ展示では、展示している恐竜の骨格の頭部に向かってスマートフォンをかざすとティラノサウルスについての説明や肉付きの画像などが表示される。見る人の好奇心を高めるこのARはもはや説明パネルを必要としない。それにこの世代はボードに書かれているよりもスマホ画面の方の文字の方に馴染みがある。
 
 ARの応用は文章量を軽くして好奇心を高める方法の一つとして、読まれることの少ない博物館のテキストを革新的に変えるのではないかと考えている。
テキスト編集のイメージ

Museum Graphics

企画展・展示会のグラフィック編集

  

業務内容

1)企画展・展示会のグラフフィック編集及び製作
2)文章作成・見出し作成
3)展示パネルの編集・デザイン・製作
4)イラストや画像作成
5)企画展等の構成プランニング
6)企画展や展示会に伴う印刷物のデザイン・制作

1.企画展業務の請負

1)情報の整理と精査
展示情報を整理し、情報の正確さを確認。また、必要な情報の選択や興味深い情報等の区分。
 
2)文章作成
文章をわかりやすくしたり資料をもとに文章作成。大見出し、小見出しの発案。
 
3)イラスト作成や画像編集
状況に応じたテイストのイラスト作成。画像合成や画質の調整など。
 
4)展示パネルの編集及び製作
企画展や展示会における説明パネルの編集。プリント出力による製作及びフレーミング。
 
5)展示構成の発案及び設計・デザイン・製作
展示企画における会場構成やデザイン。会場設営
 
6)展示に伴う印刷のデザイン、印刷
ポスターやパンフレット、リーフレーット等の印刷物のデザイン。タイトル文字やロゴマークの作成
 
【請負業務内容】
・博物館、資料館等における企画展
・子供向けの教育型企画展示
・展示会における商品やサービス説明パネル
・展示に関する文章・イラスト・画像等の作成
・年表編集・作成

博物館
 
 
資料館
企画展
企画展
企画展
企画展
企画展
企画展
企画展
企画展


2.文章作成と編集

説明の文章は読まれてない恐れも


1)説明をあまり読まない来館者たち
博物館、資料館、美術館、科学館の主役は展示品であって、文章説明はその補足に過ぎないのか?
 
オーストラリアの博物館の話だが、「来館者が個々の展示物に使う時間は短く、文章もほとんど読まれていない」、という調査結果がある。『Hein,1998』『Mclean,1993』
「来館者の多くは展示を見る時間が限られていて、文章は数秒しか読まない。長い説明だと半分も読んでくれない。したがって、簡潔な文章説明が必要である。」(要約)。興味のある展示物の説明なら読んでくれるかもしれない。興味の度合いは企画展等におけるテキストの価値を左右する。
 
写真説明や単なる文章だけという展示品が存在しないグラフィックデザインを主とした展示もある。どうすれば興味を持ってもらえるのか?とにかく印象強い見出しと簡潔な文章で分かりやすくするしかない。
 
2)情報や資料の正確さの確認と理解
見出しや本文作成のために何が最も重要か?それは、展示内容、展示物、展示テーマについての深い理解と確かな知識である。編集する側が疑問を残してはならない。そして、いくつかの情報を捨てる勇気が必要だ。

編集フロー
展示物やテーマについての疑問は文献等で必ず調べる
 

3)来館者に問いかける
来館者に問いかける文章を書く。展示はインタラクティブといわれるが、文章もまたそうでありたい。
 

 
編集事例
▲鉄の船はなぜ浮かぶのか?
身近かな物を使って想像してもらう。ステンレスの塊はなぜ沈んだのだろうか?
編集事例
▲ほぼ同じ文字数の文章を作成し、見やすいレイアウトにする

編集事例
▲文章は短く。問いかけるように書く。 


3.画像作成と編集

図解やイラスト、画像は不可欠


1)図解を使う
長い文章は図にできる。
図解の視認性と可読性は東京の鉄道路線図を想像すると明らかだ。料金と行き先を素早く理解できる。それと同じように説明と図解の組み合わせは、来館者の展示説明の理解を早め、閲覧のスキップを減らすことができる。
 
2)イラストを使う
イラストは、文章をイメージで補完する。
例えば余計な情報をカットしたイラストはスッキリ伝えることができる。また、状況を描写すると、文章に物語性が生まれ、よりイメージしやすくなる。イラストは文章への理解を助けるだけでなく、文章の緊張感をやわらげ、ソフトな展示展開が期待出来る。
 
3)画像を使う
画像は文章の信憑性を高める。
また、画像のジャンプ率を高めて画像を主とし、文章を副にレイアウトすると、自然な形で展示の閲覧ができる。それからダイナミックなサイズの画像使用は、展示会場をグラフィカルな空間にできる。
さらに、いくつもの画像を合成して全く異なったシーンを作成することも可能だ。
 
4)年代物のイラストを使う
国立国会図書館には著作権保護期間が終了した江戸時代等の絵画がある。
 
『人倫訓蒙図彙』 7巻 蒔絵師源三郎 元禄3年
 
『和漢三才図会』寺島良安 編 文政7年
 
『守貞漫稿』喜田川季荘 編
 
『職人尽歌合』3巻 東坊城和長 書 明暦3年
 
『職人尽絵詞』北尾政美 原画 山東京伝他 詞書
 
『絵本御伽品鏡』長谷川光信 画 元文4年
 
『いろは引江戸と東京風俗野史』伊藤晴雨 著 昭和4-5
 
『江戸名所図絵』 十返舎一九 作・画
 
『本草図譜』岩崎常正
 

編集事例
▲「不易流行」の概念図
文章を図解することで情報を素早くキャッチできる

編集事例
▲ビジュアルやグラフで理解の負担を少なくできる

編集事例
▲イラストを使った物体描写


4.展示構成のプランニング・設計・デザイン・施工

五感に訴える展示を目指す


ディスプレイデザインは五感を使った情報伝達が可能だ。VR(バーチャル・リアリティ)もまた仮想現実の世界を提供してくれるが、それもディスプレイデザインの中に組み込まれ、さらなる臨場感が演出できる。
 
【請負業務】
・平面プラン
・立面設計・デザイン
・FRP造形
・模型製作
・照明、音響(外注設計)
・映像制作(内容次第で外注)
・AR設計( COCOAR)、マーカー設置
・ハンズオン展示(メカ等外注設計、製作)

構成


5.展示会パネルの編集

展示会パネルは見た目良く、読みやすく


商品やサービスの紹介パネルは見た目良く、読みやすくするが、最も重要なポイントを伝えるキャッチコピー(大見出し)が不可欠だ。
 
◎パネル編集の流れ

展示パネルフロー

 

展示パネル事例
  ▲展示会パネル
【請負内容】
・パネル編集及びプリント
・ターポリン等タペストリー編集及びプリント
・ポスターフレームの用意
・LEDパネル編集及びプリント
・キャプション編集及びプリント
・年表の編集及びプリント、施工
・キャッチコピーやタイトル名の発案
バナー事例
▲展示会のタペストリー編集

年表事例
▲年表の編集

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