福岡のイベント装飾と製作・会場設営

仮設ステージと
ディスプレイデザイン

Briefing for Display design
ken.Egami 2020/05/13

 1965年8月15日、ニューヨークのシェア・スタジアムの集まった55,600人を前に、仮設のステージで演奏したのはビートルズである。当時の写真を見ると、今のコンサートステージとは比べものにならないほどシンプルだったが、これがスタジアムを使った初めてのロックコンサートだったとジョージ・ハリソンは述べている。それから何十年もたった今、ステージデザインは大きく変わった。
 
 ステージデザイナーは数種類に別れる。常設の舞台を演出する舞台美術、テレビのショーセットデザイナー、コンサートステージの設計・デザイナー、そして、僕らのようなイベントステージのデザイナー。彼らに比べてイベントステージは規模が小さく、ステージ美術の域に達しているとは言えないが、少しでも雰囲気を作ろうと努力している。しかし、テレビやプロモーションビデオに出てくるステージを見ると、その表現や技術力に圧倒される。
 
 例えばNHKの紅白歌合戦ので使われるLEDビジョンをフル活用したステージ、いろんな仕掛けで楽しませてくれるユーミンのコンサートステージ、当たり前のようになっている巨大なロックのステージなどは、シェア・スタジアムで行われたビートルズの絶叫コンサートから進化した。アーティストたちは盛りだくさんのエンターティメントを提供し、コンサートはスペクタクル化している。
 
 ステージデザイナーであるマーク・フィッシャーとジョナサン・パークの作品を紹介する『メガロステージ』によれば、演奏が見えるようにするためステージに映像を取り入れた最初のアーティストは、ローリング・ストーンズだそうだ。アイデアを出したのはミック・ジャガーだ。それから半世紀たった今、コンサートのみならず、イベントステージのディスプレイにもLEDビジョンが使われるようになっている。
 
 しかし、ステージのデザインはディスプレイだけでは実現できない、照明、音響、映像、特効などが一つになった共同作業によって成り立つ。そして、技術だけなく、チームワークや機動力、綿密なプランニングなしに出来上がらない。
 
 その最も顕著な例が米国の一大イベントSuper Bowlのハーフタイムショーだ。このステージは十数分のショーのために、わずか数分(6〜7分)でセットアップされ、ショーが終わるとあっという間に消える。カスタマイズされたステージパーツを運び込みのはすべて人力(ボランティア100人以上)だ。ステージデザインで異なるが、20以上のパートに分かれて運び込まれ、フロアービデオを組み込んだステージや音響・特効機材、モニュメンタルなセットなどが組み込まれる。ゲーム中の芝を痛めてはならないので車は使わない。もちろんゴールポストにぶつけてはならない。そして、遅れることは許されない。テレビ放送と関係しているからだ。
 
 イベントステージもそこまではないが、カスタマイズされていて、状況によっては数十分でセットアップできる。主に使われるのは専用のイントレだ。イントレの上に平台とよばれる板をセットし連結していく。その後にバックパネルを立てるだけだ。これが最もオーソドックスで単純なイベントステージだが、近頃はLEDビジョンの汎用化により、少しばかり手間がかかるようになった。
 
 そういえば、セリーヌ・ディオンがデビュー直後、日本にやって来たのはあまり知られていない。福岡でもshow caseが行われ、生まれて初めてアーティスのセットをデザインさせてもらった。彼女から直接褒めてもらったのは、今の仕事に繋がっているのかもしれない。
 時には華やかに、時には厳粛に、時には幻想的に。ディスプレイデザインにおけるステージデザインも魅力に満ちている。
 

ステージのアイコン

Temporary Event Stage

イベント用仮設ステージのデザイン・設営

 

業務内容

1)イベント用仮設ステージのデザイン
2)イベント用仮設ステージの設営・撤去

 
 
 
 


イベント用仮設ステージの種類


1.屋外用イベントステージの設計・施工
屋外イベントで使用するステージには雨対策のための屋根が欠かせない。屋根の素材は、多くの場合、幅の広いビニールやターポリンの天幕が使われ、透明や白色がある。天幕を貼るには柱が必要となり、アルミトラスはその代表だ。雨を流し落とすために天幕には傾斜を付ける。緩やかな傾斜だと、雨溜まりができる恐れがある。
 
また、照明器具や音響機器がセットできるようにするためにイントレ組になることが多い。ステージもまたイントレ組になっていて、イントレに専用の金具をセットすると平台を受けることができる。
 
高さは、ジャッキで調整し、レーザー水平器でレベル調整する。
 
このタイプのステージは、祭りや学園祭といった屋外で行われる中規模イベントに向いている。
 
2.屋内イベントの仮設ステージ
屋内イベントのステージにはいくつかの方法がある。前述したイントレベースのステージの他にポータブルステージの利用や箱馬型のステージがある。
 
イントレベースのステージは、経験的にホテルでの少し大掛かりな催事で使われることが多い。例えば国際会議のパーティや会社の周年イベントなどがあったが、その他でも使われるあるのかもしれない。今ではステージのある会議場やイベントスペースも多くなったので、おそらくその機会は減っているに違いない。
 
通常のホテル催事ではポータルステージが使われる。このステージは折りたたみできる利点がある。天板は合板、側面(蹴込)は、多くの場合スカートと呼ばれるプリーツ加工の布生地である。ポータブルステージのセットはレンタル用品店で貸し出している。
 
簡易的で蹴込の加工(経師)ができる箱馬型のステージもある。組み立て方は、直方体のブロックの上に厚み10cmほどの 平台を乗せる。このブロックが箱馬である。サイズは、W500×D350×H200mmやW300×D200×H100mmなどがあり、それぞれの寸法がステージの高さを決定する。箱馬を縦にしたり横に使ったりと3通りの高さが設定できる。
 
箱馬ステージはいわゆるミニステージ用だ。屋内イベントだけでなく、屋外でも使われる。
 
【請負業務】
・屋内、屋外ステージのデザイン
・ステージのバックパネルデザイン
・バックパネルの画像編集
・屋内、屋外ステージの現場施工、撤去
 
ステージイメージ
屋外イベント用ステージ
 
 
イントレステージ
 
 
イントレステージ
 
 
ポータブルステージ
ポータブルステージ
箱うまステージ
箱馬ステージ


イベント用仮設ステージの名称と
バック構造


1.イベントステージの各部名称
stage

   簡易的な仮設ステージ

客席から向かって右側を「上手(かみて)」、左側を「下手(しもて)」という。イベントステージでも舞台でも同じだ。
 
ステージの背面はバック(バックパネル)と呼ばれ、タイトルサインや画像、イラストなどさまざまなグラフィック手法がある。 それから「袖パネル」は演者の「出はけ」をスムーズにする役割がある。
 
ステージの前側に突き出た部分は「花道」「突き出し」「でべそ」などと呼ばれる。3方向から見られる「張り出しステージ」もある。ファッションショーでは「ランウェイ」。
 
2.バック構造
ステージの背面のあたるバックには、パネルタイプ、ターポリンなどの幕タイプ、映像の使えるLEDパネルタイプがある。
 
パネルの背面は垂直を保つために人形と呼ばれる部材が用いられ、ウェイト等で動かないようにする。幕を使う場合は、幕が固定できるようにアルミトラスで軸をつくる。いずれにしても、ウェイトは欠かせない。
 
ステージバック
屋外イベント用ステージ
 
ステージバック
 
ESWステージ
ESWステージ
ESWステージ
ESWステージ


映像を使ったイベントステージ


1.LEDビジョン
そのうち、ステージのバックデザインはLEDビジョンが常識になるかもしれない。
 
かつての大型映像機器は精細さ、輝度、コントラストに課題があった。しかし発光ダイオードの進歩によりそれらの課題解消だけでなく設置も容易になり、大きめのステージで頻繁に使われている。
 
イベントステージにおけるLEDビジョンの最大の特徴はさまざまなビジュアルが展開できる点にある。これまで固定されたままだったステージのバックデザインが次々と転換できることで、ステージイベントの劇場化が図れる。そして、 LEDビジョンは大画面に向いている。
 
LEDビジョンは、LEDパネル(モジュール)をつなぎ合わせてできている。そして、LEDどうしのピッチ(間隔)が画質を決める。ピッチが広いほど画質は粗く、画面サイズが小さいと絵にならない。そして、そうしたビジョンの多くは、遠くから見たり、建物の上にあったりなどする屋外広告用として使われ、LEDのピッチは6ミリや10ミリがある。
 
イベントステージで使われるLEDビジョンには、1.25ミリ、2.6ミリ、3.9ミリなどがあり、もろろん1.25ミリの方の画質が美しいが、精細なほどレンタル価格も高い。
 
現実的に使えるLEDビジョンのパネルサイズは50センチx50センチの正方形タイプだ。画素ピッチは3.9ミリだが、イベントステージとしては遜色ない。
 

2.スクリーン
スクリーンへの投影は、貸会議室や中規模のイベント会場、市民ホール、ホテル等で使われることが多い。
 
その設備の状況やプロジェクターの位置にも関係するが、イベントステージでのスクリーンの特性の一つは、ステージ上の演者により画面操作が手元のパソコンを使ってできる点である。そのため、スクリーンは講演会やパネルディスカッション等で多く使われる。
 
LEDビジョンが適時に映像を出せるのに対し、スクリーンを使ったイベントステージでは、タイトル看板(吊り)や垂れ幕等が必要になる場合もある。
 
【請負業務】
・LEDビジョンの手配
・LEDパネルを取り付けるためのイントレ等施工
 

ESWステージ
120枚のLEDビジョンを使ったステージ
ESWステージ
LEDビジョンとショーセットのステージ
ESWステージ
映像スクリーンを使ったステージ


イベントステージの特殊効果


1.特殊効果
ステージ演出の一つが特殊効果(特効)だ。
1)ジェットスモーク・・・CO2ともよばれ、頻繁に使われる。ジェットスノーもこの種類に入る。
2)ジャーブ・・・低カロリー花火。低温度なので火傷の心配はない。
3)キャノン砲・・・メタルテープを打ち上げる銀打ちや紙吹雪の打ち上げなどに使う。
その他、ドライアイスやシャボン玉マシーンなどもステージの特効として使われる。
 

特効
左からジェットスモーク、キャノン砲、ジャーブ
 
2.照明効果
照明器具もイベントステージの演出に使われる。例えば「ローホリ(ロアー ホリゾント ライト)を使ってステージのバックや幕を染めたり、「ゴボ」を使ってステージ上に模様を投影する。
ESWステージ

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