パブリックイベントと
ディスプレイデザイン
パブリックイベントは公共性を特徴とする。文字通り社会一般のために開催されるイベントだ。企業のプロモーションイベントが(ある程度の)ターゲットを設定しているのに対し、公共イベントは住民全体(あるいは国民)を対象にしている。
パブリックイベントの主催は国、行政機関やその関連機関が主になるが、公共の広場で開催される営利団体のイベントもパブリック性を帯びている。
その種類はオリンピックや博覧会といった大型のメガイベントもあれば、地方の自治体や団体による企画型イベント、祭りを含んだ恒例イベントなど数えきれないほどだ。ここでは、メガイベントには触れないで、地方都市のパブリックイベントについて言及する。
都市の中心部では週末になると街の広場でイベントが開催され、多くの人々が集まる。これは、古代からヨーロッパで行われていた市(フェア:fair)と同じ機能がある。そうした意味でいうと、市庁舎の前のイベント広場はギリシャのアゴラと同じ役割を果たしている。ギリシャのアゴラでは定期的な市や外国との交易市などが行われ、それは都市の繁栄の表れだった。つまり、現代におけるアゴラの活用は、都市の賑わいをつくるだけでなく、その街の活力を示しているともいえる。
福岡市が元気な街と言われる理由はさまざまだが、市の中心や駅前で展開される数々のイベントは、それを反映しているのかもしれない。例えば、福岡市の西側ふれあい広場や博多駅前では、地方の物産・観光PRイベントや環境や音楽イベント、環境イベント、クリスマスマーケット、営利団体による食のイベント、祭りなどさまざまなパブリックイベントが開催されている。それらの場所は150万人の住民にとって、どこからでも比較的短時間でアクセスできる。このコンパクトさもイベント開催のメリットかもしれない。
こうしたアゴライベントにおけるディスプレイデザインの役割の一つは"賑わいづくり"だ。しかし、ディスプレイ業者は出展者たちのためのテントや機材を提供しているだけに過ぎない。賑わいをつくっているのは、むしろ、出展者やたくさんの来場者たちだ。イベント終了後のテントだけ残された風景を見ると、そう感じるに違いない。
国土交通省による賑わいづくりのための施策として「街路・空間ネットワーク分析」というのがある。これまでの通行量調査だけでは賑わいが測れないので、可視化するマニュアルだ。確かに、賑わいは"人の出"で決まるのだが、パブリックイベントでは質も問われる。そして、質を上げる役割の一部はディスプレイデザインにもある。
パブリックイベントは比較的広いイベントスペースを使ったアゴライベントだけではない。施設内外での啓発や周知イベントも数多く実施されており、その規模や種類もさまざまだ。例えば、街頭啓発とよばれる交通安全の推進PRや選挙時の投票推進運動、献血、人権、防災といったディスプレイをあまり伴わない小規模の街頭イベントから、施設内で実施される行政機関や団体の役割周知や防犯、環境、インターネットセキュリティほか無数の周知・啓発イベントがある。
そして、週末になると、都市部の中心や駅前ではアゴライベントや啓発、PR、周知イベントが開かれ、たくさんの人が集まる。こうしたイベントはまぎれもなく街を活性化させる装置だ。そう考えると、ディスプレイデザインは、現に福岡市がそうであるように、街を活性化させる役割もある。
かつて、"ハードからソフトへ"や"第五のメディア"、"非日常性"などというイベントの特性が語られ、パブリックイベントが増加した。ところが今では、都市部のいたるところで何かのイベントがあり、その風景は、もはや"日常的"になってしまっている。ディスプレイデザインが単なる会場づくりとなっているイベントもある。
しかし、パブリックイベントにおけるディスプレイデザインも変化しようとしているのかもしれない。例えば、クリスマスマーケットではドイツやオーストリアのそれのように、ヒュッテ(山小屋)やディスプレイを使い、クリスマスムードを高めている。いわゆる"賑わいの質的向上"だ。雰囲気づくりはディスプレイデザインの最も得意とする分野だと痛感させられる。
Public event set design and fabrication
パブリックイベントの設計・デザイン・製作
業務内容 |
1)行政イベントのデザイン・プランニング・設計・製作
2)式典のセッティング・ステージデザイン
観光PRイベントは観光客の増加を目的にして、主に都市圏で実施される。観光地や物産、食などの紹介で構成され、その内容は様式化していると言っていい。規模の違いはあるが、ほぼ同じテーマで展開される観光PRイベントは、広く伝えようする点でどれも似ている。
観光PRイベントだけでその効果を計るのは難しい。よって、PRイベントだけでなく、TV、新聞、雑誌といったマスメディアやSNS、YOUTUBEを使った観光PRビデオ等とのメディアミックスが重要となる。さまざまな媒体を使った情報がイベントを通して具現化され、その価値は高まる。
観光PRイベントにおけるディスプレイデザインの役割は、情報の具現化により、その地への関心を高め、“行ってみよう”と思わせる機会づくりである。最も簡単でわかり易いのは、全てのメディア表現を露出させる方法であろう。そして、イベント内での体験やスタッフのホスピタリティにそうした展示・編集を加えることで観光PRイベントは成立する。
また、浅く広く伝えようとすると、地域の魅力も弱くなる。したがってディスプレイデザインには、情報のメリハリや一目でその地をアピールできるようなアイデアが求められるだけでなく、企画ではマニアやオタク層の存在や話題性を意識したコーナーづくりもポイントとなる。
2)ビジュアルの重要性
観光PRイベントが印刷物の延長であってはならない。また、いくつもの観光ポタター貼りが効果的か考えるべきである。
その地方の雰囲気を感じさせる、あるいはその地に行った気分にさせるようなビジュアルの使い方は、最初のデザイン過程で検討すべき課題である。物産や食の体験、映像など雑然とした空間の中で、ビジュアルは文字以上にその地域を説明してくれる。魅力を高めるレイアウトやアイキャッチとして使う方法、まるでそこに行ったかのようなインスタ用ビジュアルとして使う方法もある。
観光PRイベントにおけるビジュアルの考え方は、テレビ番組のセットづくりに似ている。ビジュアルは平面だけでなく立体もある。
【請負業務】
・観光PRイベントの会場設計・デザイン・施工
ビジュアル編集
キャッチコピー作成
タイトルロゴデザイン
ノボリのデザイン、外注製作
映像編集(パートナーシップ)
・各種レンタル品の手配
・ARの編集及びCOCOARの提供
<傾斜台と木製ボックスのレンタル>
物産展で使える傾斜台と木製ボックスをレンタルしています。300x600、深さ150のボックスを2段にして乗せることができます。数量は50個程度です。必要であれば、別途、テーブルの代わりなる簡易的な台もあります。
食のイベントはおおよそテントや調理器具といったレンタル用品で構成され、ディスプレイデザインは、そのレイアウトやサインデザインを担当する。
レイアウトでは、各ブースの配置や給排水や電気配線計画、サインデザインでは、入り口のアーチやノボリ等のデザイン・制作を行う。
保健所への届け出を必要とする
<お祭りやイベントでの食品の提供>
簡易な施設を用いて短期間(2週間以内)営業する場合は、提供する食品の種類などに応じて臨時営業許可を取得する必要がある。
・保健所に相談・・・出店日1ヶ月前まで
・申請書の提出・・・出店日2週間前まで
・許可通知書・・・通常2週間以内に交付
■臨時営業許可の種類
飲食店営業、喫茶店営業、菓子製造業、アイスクリーム類製造業、魚肉ねり製品製造業、食品販売業
福岡県の施設基準についてはこちらから
【主なレンタル手配品】
・各種テント
・冷蔵、冷凍ショーケース
・冷蔵、冷凍ストッカー
・コールドテーブル
・冷蔵庫
・製氷機
・缶ウォーマー
・フライヤー
・ウォータータンク
・電気コンロ
・ポット、湯沸かしポット
・流し台
・シンク
・調理台
・ネタケース
・簡易手洗器
・発電機
1)啓発イベントとは
啓発イベントとはその事柄についての知識を持っていない人に対して、教えたり、興味を深めてもらうための催しである。啓発に似た用語に啓蒙がある。その違いは能動的か受動的かにある。前者が啓発であり、示されたモノを通して自発的に考え理解を深める。後者の啓蒙は単に教示するだけである。
多くは行政機関を主催として行われ、そのテーマや内容は多種多様だ。例えば、街頭で行われる選挙投票をよびかけるPR活動や交通安全推進運動なども啓発イベントの一つだが、ディスプレイデザインの活用は少ない。しかし、それは規模の点でそうなっているのであり、イベント会場等での開催にはプラニングされることで装飾も発生する。
そのほか、緑化運動推進のためのイベントをはじめとした環境づくりのイベント、水の大切さや地域の川を知ってもらうイベント、人権をテーマにしたイベント、インターネット上の犯罪を知ってもらうためのイベントなどがある。
また、行政機関の施設を通し、地域住民との交流やその存在を理解してもらうためのイベントも啓発イベントの一つといえよう。それでのイベント展開はフェステバル化の傾向があり、自ずとディスプレイデザインも関わってくる。
2)啓発イベントとディスプレイデザイン
啓発イベントの大きなポイントはいかに興味を持ってもらい、理解できるような発案ができるかという点にある。そのため、主催者側からの一方的な情報提供ではなく、イベント参加者が能動的に知ったり考える機会を展示や編集手法を用いて提供する。
ディスプレイデザインの手法には触れる体験型のハンズ・オン展示や珍しいモノや興味深いモノなどの展示で興味や共感を起こす方法、ワークショップと展示の組みわせ、ゲーム機器を使う方法などがある。要するに、"楽しめる情報伝達"が求められる。ディスプレイデザインの特性である"五感"を使った展示が可能だ。
今日ではアプリを使った展示、SNS効果のある展示手法も用いられている。NASAの「月面着陸50周年記念イベント」では多くのAR活用が展開された。ARはその場に行かなけれなば体験できない。来場者の増加を図る有効な手段の一つである。
ディスプレイデザイナーはイベントプランナーと共同し、そのプランをより良くする展開させる役割がある。その中で“イベントとディスプレイデザインに共通する「双方向性」を生かした、来場者が能動的に知ることのできる機会づくり”は、啓発イベントにおける究極のコンセプトであろう。
啓発イベントはメディアへの露出によりその効果がより発揮される。主催の多くが行政機関である点もメディア露出のアドバンテージがある。ディスプレイデザインのプランニングでは"動き"のあるシーンを想定し、メディア効果を高める。
4.DDCATと啓発イベント
これまで多くの啓発イベントのプランニング及び施工に携わってきた。この分野の発想は、科学館やアミューズメント施設の展示の近い。
式典はなぜ行われるのか?式典は意識の共有にある。そして関係者で共有した瞬間はメディア等で発信され、意識の共有域はさらに広がる。
ディスプレイデザインの関わる式典の種類はさまざまだ。中には神事として行われる竣工式や定礎式のほか、パブリックイベントとしての式典には、スポーツ大会やレースの開会式や道路の開通式、除幕式などがある。テープカットやくす玉割り、除幕などその演出方法もさまざまだ。
珍しい式典の一つに採火式というものある。ギリシャのオリンピアで太陽光から灯されるオリンピックの聖火と同じように、神に捧げる神聖な火というコンセプトで、我が国のスポーツ大会でも聖火を灯すケースもある。
全てが太陽光からというわけではないが、これまで4度の聖火式と採火器のデザインをする機会をもらった。原理は難しくない。あとは太陽を味方につけるだけだ。念のためにバックアップも必要だが。
2)DDCATと採火式
これまでいくつかの採火式に関わってきた。例えば「ユニバーシアード福岡大会」、「炎の博覧会」、各地の「国体」などでの実績がある。手法はさまざまだ。ギリシャと同じように凹面鏡を使って太陽から採火する方法や、レンズによる採火、古式の火起こし、火薬を使い採火皿に点火させる方法などがあった。
2020年はコロナウィルスで一旦流れてしまったのが残念だ・・・。
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