什器とディスプレイデザイン
什器は家具ではない。だからといって什器はディスプレイでもない。インテリアデザインに入りそうだが、これといった装飾もなく機能性が優勢された道具と言ったところだろうか。
ルイス・サリヴァンの「形式は機能に従う」の解釈はいくつかあるようだが、様式ではなく、機能優先でデザインすれば美しくなる。つまり装飾は美しさを阻害するという意味だろう。
だから多くの店舗カウンターはサリヴィアンの教えに従っていると言えるかもしれない。レジや収納、陳列といった機能を優先させたカタチが四角くなっただけだ。
この世でデザインされたほとんどのモノには機能があり、それはデザインに反映されている。例えば、タイヤが四つあれば車、注ぎ口のついた瓶は醤油やソース入れ、壁についた2つの穴はコンセント(outlet)だし電気のスイッチは押すだけという具合だ。
ところが、ディスプレイデザインの中には、そうした働きとしての機能を全く無視し、単なる装飾として活用するケースもある。具体的機能のないただ見るだけの品物。実は、このデザインは実に難しい。機能を優先させるなら、その部分から考えればいいのだけれど、だた見せるだけとなるとつかみどころがない。ウィンドーディスプレイやシーズンディスプレイはその代表だ。あえて機能をいうなら、"見せる技による雰囲気づくり"という抽象的な役割である。これは、日本におけるベンツ車の機能に似ている。その車を運転している人はきっと裕福なのだろうというイメージ訴求。これもまた、機能の一つだろう。
その点、レジカウンターや展示台など店舗什器のデザインはディスプレイデザインに比べてあまり悩まなくてもいい。ある程度のフォーマットが頭の中でできているからだ。そして、それらは什器と呼ばれている。さて、「什器」とは一体何だろう?
「什器とは、仏教の什物に由来し、寺で宗徒が使う器具、日用品、生活用品を指す。これらは「什」「聚」などと呼び、1つや2つなどではなく10を単位として数えなければならないほどたくさんで雑多であることから、中国の宋代に禅宗寺院内で使われはじめた語である」らしい。(ウィキペディア)
なるほど、勝手に解釈すると、カテゴリーごとに同じデザインのものがたくさんあるイメージだ。何も描かれていない漆塗りのお椀がずらりと並ぶ。実に美しい。
ところが、カウンターや棚などの什器には、店舗のイメージづくりという機能もある。おしゃれなバーカウンターと自然食品を扱っているようなナチュラル系のレジカウンターでは全く異なったデザインになる。それによってショップへの第一印象や雰囲気、さらには店主のセンスさえ伺える。場合によっては流行るかどうかも左右する。
ルイス・カーンや安藤忠雄氏らに見られる打放しコンクリートを見て、クールだと思う人は少なくないだろう。タイルや石張り、塗装、クロス張りなどでカバーリングしていない壁を見ていると、禅でいうところの「無」を感じる。これぞまさしく建築における機能美とも言えそうだ。
一方、僕がデザインしている什器の仕上げを手助けしてくれるのが材料だ。無垢板を使う場合もあるが、その多くは木材の上にポリやメラと呼ばれるプリント板が貼られる。それらは化粧板ともよばれ、要するに化粧して仕上げているわけだが、ご安心。化粧板のデザインの多くは素材感でできている。例えば、木目プリント、あるいはメタリック調と言った具合だ。打放しコンクリート手法と比べれば偽物感も拭えないが、プリントではなく、突き板と呼ばれる木質の合板を使って本物みたいに仕上げる場合もある。
今では多様な素材が使えるようになった。素材を生かして商環境にあったデザインを提案する。中には美しさを感じる什器ができることもある。材料を生かしている点では漆塗りのお椀と同じである。だから、什器の美しさは機能美といってもいいかもしれない。
装飾ナチュラルかアーティフィシャル(人工的)か。マットかグロスか。硬いか柔らかいか。派手か地味か。それとも、市販品かオリジナルなのか。それらの選択能力もディスプレイデザイン能力の一つだ。
Exhibition counter,furniture
店舗什器・展示台の設計・デザイン・製作
業務内容 |
1)展示台のデザイン・製作
2)店舗什器のデザイン・製作
3)屋台・ワゴンのデザイン・製作
4)上記の図面や俯瞰図等代書請け負い
店舗で使用する什器台には商品陳列・販売用とレジカウンター等の作業台、情報機器用ハウジングなどがある。これまで扱った什器は下記の通り。
建築申請を必要としない仮設で移動可能な屋台(小屋)もこの分野に入れている。
【商品陳列台の製作】
平台や多段台など様々なタイプの設計・製作
商品陳列台を装飾し、移動できる単独の販売台と考えるワゴンの設計・製作
【冷蔵・冷凍ケースのカバー】
冷蔵機器の幅に合わせた設計・製作
【棚の製作】
壁面棚の設計・製作
【レジカウンター・作業台】
レジの大きさや重さ、電気通信設備に対応したレジ台の設計・製作
【映像機器やPOSシステム等のカバーやハウジング】
各種ディスプレイ機器をカバーするハウジングボックスの設計・製作
【屋台等】
ショーセットタイプで移動可能な展示販売台の設計・製作
【展示会用什器】
素材や加工の質や素材を工夫し、コストを抑えた展示台やカウンター等の設計・製作
1.構造
店舗デザインを専門にしないので僕らに依頼される什器のほとんどは、ほどんど凝ったデザインのないシンプルなカタチばかりだ。だから構造もシンプルに思うだろうけど、製作図にはたくさんの情報が詰め込まれる。棚のセットの仕方や、レジまでの電気の通し方、扉の閉じ方、巾木の入れ具合などいろいろある。
出来上がりはシンプルだ。棚があったりなかったり、扉がや戸があったりなかったり、巾木が高かった、低かったり。その組み合わせ程度である。
2.素材
台型什器のほとんどは木軸構造に化粧板や木質板を貼って仕上げられるので、裸姿が木軸で、化粧板は服のようなものである。これは人のファッションと全く同じ原理で、おしゃれな什器もあれば、素朴なものもある。中にはエキセントリックな素材もあるが、こうしたのは目を引くわりに流行に弱い。そこで、あまり主張せず、何となく存在しているのが好まれるように思われる。
素材も情報である。木柄のナチュラル感や金属質のクール、パステルカラーのカジュアル、原色のハードなどいろいろだ。それらの情報にはイメージづくりの役割がある。だから、これが良いとかこれは嫌いだとなる。木柄にも明るいのや暗い感じの柾目、木目などいろんな種類があって、選ぶのに悩むこともあるが服を選ぶのと同じだから、デザイナーの好みが優先されるのかもしれない。
・ポリとメラの違い→
・突板とは→
・硬質塩ビシート
・羽目板とは→
・3Dパネルとは→
・メラミン焼き付け塗装とは→
・セーフティエッジ→
3.展示ケースの設計・製作
ガラスや透明アクリル板を使ったショーケース
展示ケースは展示品をガラスや透明アクリル板で覆い、ホコリや盗難から守る。ショーケースともいわれる。向こうではdisplay caseやvitrineとよばれる。
ガラスを使ったショーケースはGケースとも呼ばれ、多くの場合、ガラスの固定にメッキ仕上げの金属フレームが使われる。ガラス自体をそのフレームに固定するので、どうしても展示品を出し入れするための引き戸やカギが必要となる。
金属フレームを使いたくないときは、ガラス専用の接着剤で接合する。スッキリ見えるのは確かだが、何かたない気になるのは不思議だ。
ガラスケースの多くは店舗や博物館展示で使用される。特に宝飾関係や高級品展示では、ガラスケースを用いる。さらに、ガラスケースのフレーム部に照明器具のセッティングが容易にできる特性がある。もちろん、新規に製作するよりはレンタルケースを利用した方がコストを抑えることができる。
博物館の展示もガラスケースが多く使われる。向こうではdisplay caseやvitrineとよばれる。
展示に使う透明ケースの中には、ガラスではなくアクリル板を使う場合もある。これは製作時間が短縮できる。そのため全体的にコストの低減が可能だ。しかし、展示品の入れ替え時は、アクリルの箱を台から外す必要がある。そのため幅の広いショーケース向きではない。特別な形状ではなく、短期のイベントの場合、レンタルも利用する。
◆ガラスケースレンタルのはじまり
ガラスケースのレンタルという業種は、よく考えられたもので、明治時代からあったという。特に陳列ケースに特化していたのが、「湘南木工所」という会社だ。創業者の加茂増五郎は明治29年に渡米し、陳列ケース専門の会社を作った。最初は製作だけだったが、組み立て式を考案し、レンタルを始めた。日本のあちこちで博覧会が開催されていた時代、独占事業だったという。
ハウジング什器といってもピンとこないかもしれない。極端にいえば、ノート型パソコンのカバーを設計するような感じだ。
ハウジングは、デジタル機器や通信機器、液晶ディスプレイ、デジタルサイネージといった電子機器をカバーリングする。役割は大きく二つある。一つは空間の中で目につくようにデザインされる。もう一つは使いやすくする。
一つ目の気づいてもらうようにするのは、ディスプレイデザインの要素がある。しかし、空間環境にあったデザインに自ずとなる。おとなしく、でも存在してるみたいな。
二つ目は機器の余計な部分を隠し、使う人が混乱しないようにする。必要のないボタンやスイッチ、製造会社のロゴマークや文字情報等を見えなくすることで、利用者はわかりやすくなる。そすすることで、使いやすく、わかりやすくなる。例えばカードリーダーのハウジングでは、利用者はカードを入れるだけ、情報端末であれば、指でタッチするだけでいいという具合に。
こうしたハウジング什器の大部分は特殊な形状を除き、スチールなどの金物で成形される。放熱もデザインポイントだ。
仕上げは、メラミン焼き付け塗装にプリントを貼る方法や、硬質エンビタックシートを貼る方法などがある。多くはメラ焼き仕上げだ。
什器周りのディスプレイ
お土産店で、実演販売や試食コーナーは売り上げに貢献するかもしれない。
「和風屋台」なら市販品もある。ホテルの宴会などで見かけるタイプだ。もちろんオリジナルで製作する場合もある。
可愛いワゴンで集客を図る
キャスター付きのワゴンや屋台には移動できる利点がある。ショッピングモールやイベント会場での移動が容易だ。
考え方は、多段式の什器のトップにテント生地等のオーニングをつけただけだが、終了時のしまい方や多様な商品陳列方法などいろんな機能をつけることができる。
簡易的なワゴンであれば、市販品の取次もしている。
屋台やヒュッテはテンポラリーな店舗である。仮設なので移動や撤去が可能だが、構造的には建築の側面もある。耐久性や素材はイベントと異なり、より強固で木板や瓦など、より専門性の高い素材を用いる。屋台は動かせる小屋という言い方が近いかもしれない。
屋台の第一の利点は移動できる点にある。福岡の屋台は広く知られた観光スポットの一つだ。彼らはたたんだ状態でそのまま曳いたり、バイクで牽引して自分の縄張りに運ぶ。あれは実に機能的で良くできていて難しそうなので製作の経験はないが、小屋タイプなら製作可能だ。
8.製作・納品までの流れ
■ディスプレイデザインにおける実施までの流れ
1)打ち合わせ
・店舗や設置場所のロケーションとイメージづくりを行います。
2)イメージスケッチ
・完成予想の姿を絵に描いて確認します。
3)レイアウト等の製作
4)図面提出
・製作図を作成します。
5)確認と了解
・修正が何度か発生します。
6)発注を受けてから専門の業者に発注します
・木工、サイン、電気、特殊造作、商品の購入などを行います。
7)製作管理
・途中でそれぞれの業者で進みぐあいや出来具合いを確認して回ります。
8)現場設営
・事前に忘れたものがないかなど確認して、現場の段取りを組み、現場入りします。
9)運営時
・現場管理します。
10)撤去
・早く撤去できるように段取ります。
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