"のぼり"とディスプレイ
1."のぼり"とディスプレイ
旗(flag)はその上部が固定されないので風がないと全体が見えないの対し、バナーは(banner)垂らされるので全体が見える。屋外の場合、強い風が吹くと見えるのが旗で、見づらくなるのがバナーだから全く逆の機能である。
そうした点から言えば、旗とバナーの中間に位置付けられるのが「のぼり」と言えそうだ。のぼりは風が吹いても吹かなくてもある程度認識できる。
さらに、のぼりは移動が容易だ。設置方法もくくりつけたり、専用のウェイトに差し込んで立てることができる。さらにのぼりのポールは伸縮できるだけでなく、ポール内に部材の収納ができる。
のぼりは街のいたるところで見られ、我が国の風景の一つとなっているが、のぼりが比較的廉価に提供されているのもその要因だ。しかし、のぼりは日本独自のサインとして活躍し、いくつものアドバンテージがあるのだから、実はものすごい発明だったのだと言ってもいいかもしれない。
ところがディスプレイデザインでは補助的な役割として扱われる。のぼりの安っぽさがその価値を下げているのかもしれないし、見飽きた存在なのも原因かもしれない。そう考えるのはディスプレイデザインが時代性を伴っているからである。
フェスティバルの装飾でバリ島の「のぼり」ともいえる「ウンブルウンブル」を使うと雰囲気が発揮できる。これは、みる人の意識に関わっている。例えば、日本のジャンボのぼりをバリ島に立てたとしたらバリの人たちは新鮮さを感じるかもしれない。そう考えると、ディスプレイデザインの時代性とは"新鮮さ"と換言したほうが分かり易いかも知れない。
2.のぼりの印刷
シルクスクリーンが普及するまで、のぼりの印刷手法は染色だった。植物や貝殻、昆虫などを原料にした染料で生地を染める方法でその歴史は古代エジプトにまで遡るという。シルクスクリーンの手法が発明されたのは1907年だが、我が国で開始されたのは1948(昭和23)年だという。現在、昇華転写という手法が加わった。昇華インクで印刷したものをヒートプレス機で転写する手法だ。
現在は主に染色・シルクスクリーン印刷・昇華転写という3つの長所を生かしたくさんののぼりが生産されている。
(1)昇華転写
昇華インクでプリントされた原稿を専用のメディアに印刷し、ヒートプレスで転写する手法。シルクスクリーンのように版を作る必要がないので、小ロットでも印刷できる。また、大判プリンターを使って出力するので、フルカラー印刷も可能だ。しかし、現在は鮮明度にやや落ちる。生地はテトロンポンジやトロピカルといった改良された化学繊維が用いられ、種類も豊富。シースルー印刷も可能だ。
(2)シルクスクリーン印刷
シルクで作った版の上からインクを擦り付けるようにして転写する。多くは「ポンジ(テトロンポンジ)」とよばれる少しだけ透過性のある薄い生地に印刷される。昇華転写に比べてクッキリと印刷できるが、色と色の接触が苦手だ。また、小ロット印刷には向いていないが、一つの版で相当数の印刷ができるため、数が多くなればコストの軽減が期待できる。
生地はポンジだけでなく、天竺や金巾という素材もある。これはこいのぼりの生地ととしても使われるぐらいだからポンジに比べて長持ちできる。
(3)本染め
本染めは職人技が求められる。刷毛を使い図柄のパートごとに染めていく。手仕事のため昇華転写のデジタル印刷やシルクスクリーンに比べ単価は高いが、長持ちするだけでなく、裏面までクッキリと透過するのでとても綺麗だ。
3.のぼりのポールの長さと生地の大きさ
のぼりのポールは竿ともよばれる。一般的なポールの長さは最大3mぐらいまで伸ばせるが、4mものや5m、7mまで伸びるポールもあり。素材にはポリプロピレンやスチール、ステンレスが使われている。色は緑が多く見られるが、白や黒、竹風柄もある。
生地の通常サイズは、450x1800や600x1800が、900x2700や1000x3300といったジャンボのぼりとよばれるのぼりもある。
4.のぼりのベース
のぼりベースの多くは注水タイプで価格は様々だ。10リットル〜20リットルなどがある。ジャンボのぼりの場合は、躯体にくくりつけるのがベスト。
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