福岡の展示装飾・ディスプレイデザイン

ディスプレイデザインの領域


last updated on April 27 2020
Ken Egami

1)多岐にわたるデザイン領域
 

design
tookapicによるPixabayからの画像
 
ディスプレイデザインで応用されるデザイン分野

 
 ディスプレイデザインはその分野によって異なるが、さまざまなデザイン領域を侵食する。例えばグラフィック、インテリア、建築、造形、映像、照明、アート、機械工学、通信などのデザイン分野が応用される。
 
 (1)グラフィックデザインの応用
 ワイドフォーマットのインクジェットプリンターの強みは画像をプリントできる点である。それまで、ディスプレイデザインでのグラフィックはカッティングシートや写真方式が用いられていたが、大きな画像を再現するのが難しかった。
 
 ワイドフォーマットのインクジェットプリンターが普及し始めたのは1990年の中頃からだ。それ以前の1991年頃登場した大型プリンターは再現度が低く、展示会等でなかなか使えるものではなかった。しかし、大型プランターの急速な技術開発により、今では展示会や博物館展示、イベント、サインなどさまざまなデイスプレイ分野で使われるようになっている。インクジェットプリンターは、原稿をそのまま再現できるのと、造形に比べて手間がかからないなど利点が多く、ディスプレイ業の必須アイテムとなっている。また、プリントに使うメディアもいろいろなタイプがあり、デザインに応じて使い分けられている。
 
 ワードフォーマットのインクジェットプリンターが普及するまで、ディスプレイデザインのグラフィックの多くは、カッティングシートに依存していた。初めの頃はハンドカットだったが、1980年の中頃に自動でカットできるカッティングマシーンが販売されるようになり、プリンターにそのシェアを奪われた。しかし、カッティングシートは、ガラス面への利用価値が高いだけでなく、その耐久性や美しさ、デザイン性のある素材開発などにより、多くのシーンで使われている。
 
 (2)建築・インテリアデザインの応用
 ディスプレイデザインは建築とも無縁ではない。建物づくりはディスプレイデザインでも行われる。例えば博物館での建物復元ディスプレイは、テレビや映画のセットづくりの延長線にある。また、ラス・ベガスのルクソールホテルの巨大なスクフィンクスやテーマパークのセットづくりも業務的には建築だ。そして、大きな造形や屋外での高さを伴ったディスプレイは、建築申請が必要な場合もある。だからクリスマス・ツリーは要注意だ。また、ディスプレイデザインでは、建築素材を利用も少なくない。
 
 展示会ブース(スタンド)のデザインは店舗設計に近い。しかし、ブースは一時的であり仮設に過ぎない。長くても一週間程度の仮店舗のようなものである。店舗機能よりも、その企業らしさ=ブランドを伝え、より多くの来場者の関心を集めたり、期待に応えるデザインになる。そして、ディスプレイデザインにはコストパフォーマンスを図る手法や素材が用いられる。その解決方法の一つとしてシステム化されたレンタル機材が使われている。組み合わせのできるレンタル器具の利用は、コストを抑えるだけでなく、産業廃棄物が削減できる。展示会場ではそれらを上手に使い、カスタムメイドのように見せる優れたデザイナーもいる。
 
 そのほか、展示台は家具の設計に近い。しかし、機能だけを生かし、個性的かつ低コストでできるようにデザインされる。見えないところは手を抜くのだが、これは工芸屋の裏技だ。
 
 だから、ディスプレイ業社の中には、実際に店舗の内装工事に携わっている企業も少なくない。展示会と内装の考え方はさほど変わらない。使っている素材や、仕上げ方が違うだけだ。
 
(3)照明の応用
 見た人を惹きつけるための照明計画は一般的な店舗設計と同じ考えだが、仮設のディスプレイでは、店舗では使わない照明器具が用いられる場合が多い。例えば、舞台用の照明やHIDランプ、ムービングなどがあるが、特に特殊なLED照明は着目される。演出に使えるLED導光板などは日々進化している。
 
(4)造形
 ディスプレイデザインの立体物には、オリジナルのフィギュアやレプリカを含む特別なフォルムの造形物、さらにはジオラマや模型づくりがある。例えば、店頭PR用のFPR製の人形や博物館等での地形を立体的に見せる模型、集落の光景ジオラマなどがある。多くの場合、造形作家との共同作業になる。
 
 ウィンドーディスプレイも造形の一つと言える。人工、自然などの造形物が使われるシーンも少なくない。デコレーション、アレンジメント、照明といった繊細なデザイン処理が求められる。今日では、プリントも使われるようになった。
 
 
2)ディスプレイデザインの展開場所
 

hakata

 
 フランス語の展示がexpositionであるようにディスプレイデザインは多くの人の目に晒される。
 
 空間の解釈はいろいろあるだろうが、僕らが関わるディスプレイデザインの展開場所は大きく二つに分類できそうだ。
 第一には博物館や資料館・美術館、博覧会等、行政やその関係団体等を主とする啓発イベント等や祝祭時における街頭装飾といった公共の空間があり、これらはパブリック・ディスプレイともよばれる。テーマパークやアミューズメント施設もこれに入るかもしれない。
 
 第二は企業やショップ等における商業目的のコマーシャル・ディスプレイだ。ところがディスプレイによるコマーシャルは商業施設の内外だけでなく公共空間でも展開される。
 コマーシャル・ディスプレイの活動範囲は広い。展示会場でのブース、商品プロモーションにおける環境づくり、店舗内におけるシーズン装飾やコマーシャル・インテリア、デパートや商業施設でのウィンドーディスプレイ、屋内外の各種サインなどがある。特異な分野では、パレードのフロート、テレビやステージのショーセットもコマーシャル・ディスプレイだ。
 
 そのほか、お正月の門松や注連縄、クリスマスの自宅演出といったパーソナル空間も弟子スプレイの空間である。さらに、将来的には成層圏もディスプレイ空間になるかもしれないが、僕らが関わる世界ではない。
 

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