福岡の展示装飾・ディスプレイデザイン

ディスプレイデザインの特性


last updated on April 27 2020
Ken Egami

1)ディスプレイデザインの特性
 

しめ縄の写真
 宮地嶽神社の大しめ縄 
しめ縄には神聖な空間の境界を示すディスプレイがある。
 

 ディスプレイデザインには大きく3つの特徴がある。
1)視覚性
 その一つは「視覚性」だ。ディスプレイデザインは、視覚により情報を伝える性質が強い。立体的に伝えるディスプレイデザインは、グラフィックデザインよりも見た印象を強くする。一枚の紙に書かれた文字でさえ、人の目の高さや読める範囲が考慮され、ヒューマンスケールに合わせて設計される。
 
 そうした意味ではビジュアルコミュニケーションの一種とも言える。ビジュアルコミュニケーションには文字情報よりも「速く伝える」特性がある。さらにそのコミュニケーションは年齢・性別・国籍を問わない。一方で、見た人の受け止め方は一様でないため、性格さに欠ける。しかし、ディスプレイデザインは、グラフィックデザインやインテリア、映像といった他分野のデザインを応用し、複合的に設計される。つまり、複合デザインであるディスプレイデザインは、いろんなデザイン技法を用い、見る人に「強い印象」を与え「正確」に伝えることができる。(ただし全てがそうだと限らない。予算やデザイン能力が影響する)これは、映像を主としたテレビコマーシャルが、音や文字を補助的に使っているのと同じ理論だ。
 
 ディスプレイデザインはそれと同じように、視覚だけでなく、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった「五感を使った訴求」が可能である。例えば、展示品の解説を音声で補助できるシステムや、箱の中にフィギアを入れておき、参加者は実物を見ないでその形から想像できるようにするといった方法であるが、そのファーストステップは、やはり視覚である。
 
2)仮設性 
 二つ目の特徴は「仮設性」だ。ディスプレイデザインでつくられるモノの多くには期間が設定されている。そのため、作られたり、設置されるディスプレイは「仮設」と呼ばれる。日本国語大辞典の文章を借りると「必要な期間だけ、仮に建てたり、設備したりすること。また、本物に似せて仮に作ったもの。」である。仮設性はディスプレイデザインの設計に反映され、必要に応じた作り方になる場合が多い。国語辞書にあるように、本物に似せてつくることもある。7月に入ると博多の町であちこちで「飾り山」が見られる。福岡を代表する美しい仮設のディスプレイだ。しかし、仮設故に取り壊される。
 
 「仮設性」と「一過性」は双子の兄弟のような関係にある。一過性の価値は、マーケティング手法の一つである「期間限定商品」に似ている。希少性を高め、価格を下げることなく販売する手法だ。ディスプレイでいうなら、花火大会がその典型だ。その日、その時だけしか見ることができない。それがテレビ放送されていたとしても、現場で見る方が臨場感が伝わってくるので、見に行きたくなる。また、一過性は観光旅行にも似ている。例えば、初めてディスニーランドに行ったなら、できるだけ多くを見てみたいに違いない。時間が限られているのでのんびり見ているわけにはいかない。それは一過性を背負っているからである。
 
3)イベント性
 ディスプレイデザインは「イベント」と密接な関係にある。ディスプレイデザインの仮設性とイベントの一過性がセットになり効率的な情報発信装置になる。多くの人を集めるのは、この装置が機能しているからである。
 そこでは、テレビに代表されるビジュアルコミュニケーションをはるかに超える情報発信ができる。第5のメディアとよばれるイベントの特徴は、人と人とが直接コミュニケートできる「双方向コミュニケーション」であるが、ディスプレイデザインによる視覚情報も大きく働きかけている。ディスプレイデザインには、「場」をつくる役割がある。

4)用語としてのディスプレイ
 (1)DISPLAYという用語の意味
 ディスプレイ(display英・exposition仏・exposizione伊・Ausstellung独)という用語には、展示する・陳列する・表出する・示すなどの意味がある。
 折っていたものを広げる意を語源とし、否定形である接頭語disに"折る"を意味するplicare(ラテン語)が組み合わされ、熟語となった。元来、「旗や帆を広げる」ように広げる・広がる・撒き散らすといったイメージが強かったようだ。現在のような「展示や披露」の意味としては、少し後になって使われるようになったとされる。
 また、"(軍隊を)展開させる"・"配備する"のdeployもdisplayと同じようにラテン語のdisplicareという言葉から派生している。語源からイメージされるディスプレイは次々と展開され広がっていく壮観な光景がある。そう考えると、ディスプレイデザインという用語は、単に見せて展示するだけの意味を超えているに違いない。
 
 今日、ディスプレイという用語の意味には、僕が仕事としている展示としてのディスプレイだけでなく、コンピュータや通信機器の画面装置や動物の求愛行動として見せる行動(courtship display)も混在している。海外における展示デザインはディスプレイデザインよりもexhibition designとよばれる。店舗であればretail store displayだし、ウィンドー装飾はwindow displayだ。また、フランス語では展示会とテレビのディスプレイは違う用語が使われているみたいだ。そもそもdisplayという用語はフランス語から派生しているが、フランスでの展示会はexpositionというのは、よほど英語が嫌いなのだろうか?
 我が国では「展示装飾業」という名称もあるが、現在の『日本産業分類』においてはサービス業の一つに区分され、液晶画面製作業みたいな「ディスプレイ業」となった。
 
 その中でも「特に分類されないもの(業種)」として扱われているのは、ディスプレイデザインの多様性が原因かもしれない。その説明を読むと、一般的に使われている「展示装飾業」そのものなのだが・・・。
 「主として販売促進,教育啓もう,情報伝達等の機能を発揮させることを目的として,店舗,博覧会々場,催事などの展示等に係る調査,企画,設計,展示,構成,製作,施工監理を一貫して請負い,これら施設の内装,外装,展示装置,機械設備(音響,映像等)などを総合的に構成演出する業務を行う事業所をいう」というのがその説明だ。サインや店舗外装のようなエクステリアやインテリアのデザインもディスプレイデザインに入っているようだ。
 
(2)見世と店
 言葉の成り立ちからいうと、日本語の「展示」とカタカナ語の「ディスプレイ」は、さほど変わらない。展という漢字は、借りて「のばす」「のびる」を原義とし、人が体を転がして寝返りを打つ様子や敷きかわらを並べる様子から並べる意味があるという。(『角川大字源』)それに「示す」が組みあわされてできた言葉であり、『広辞苑』によれば、展示とは「品物・作品をならべて一般の人々に見せること」となる。展示という用語が使われ始めたのがいつ頃からかは分からない。『幕末・明治初期漢語辞典』には博覧会や博物館は書かれているが、展示についてはふれていない。だから、広く使われるようになったのは比較的新しいのかもしれない。何れにしても展示は見せる意思や行為なしに成立しない。
 
 我が国の見せる行為は「店」につながり「show」も含意する。かつて、店は「見世棚」(おおよそ鎌倉時代)と呼ばれていた。やがて「見世棚」は「見世」に略され、江戸時代になると「店」という言葉は一般化していたようだ。「大きい店舗は「たな」,小さい店舗は「みせ」と称することもあった」という。「見世」には商品の陳列棚の意もあったが「遊里で、遊女が客を待ち居並ぶ座敷」も指した。店は今も昔も商品を並べ見せて、顧客に情報を提供しながら販売する施設だ。
 それから、「顔見世」や「珍しい物・奇術・曲芸などを見せて料金を取る」見世物という言葉はまさしくショーの一種である。
 
 普通に商品を並べただけでは商売にならないので陳列を凝らしたり、顧客の興味を引く工夫やアピール法を考える。それが「店」における「showing」だ。今日では、科学的に視覚的効果を図り、店内の演出や商品のレイアウトなどを設計する「ビジュアルマーチャダイジング(VMD/visual merchandising)」というマーケティング分野が確立され、ディスプレイデザインと区別されているが、本来ならば、内装やそれに順ずる内装(コマーシャル インテリア)も含めてディスプレイデザインの領域だ。

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