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展示ブースの色


last updated on Jun 11 2020
Ken Egami

1)コマ装飾の色についての考え方

 
 製品パッケージ等の色は購買意欲を作用する。人が商品購入の 決定に費やす時間は90秒、その評価の62%〜90%を色だけが占める とされる。
 
 そう考えると、展示会ブース(スタンド)のカラーリングもまた来場者のファーストインプレッションと大きく関係し、ブースへの誘引を左右するのかもしれない。
 
 ◆

(1)ブランドカラーやコーポレートカラーの活用

  広く知られた商品のブランドカラーや企業のロゴマーク等にも使われているコーポレートカラーはブース展開に有効だ。
 
 例えば、オレンジ色の重機で知られるキャタピラー社(Caterpillar)はオレンジ色と黒を使ったブース展開を特徴とし、コカ・コーラ社はコカコーラレッドとよばれる赤色と白の配色を使う。わが国の企業でも、富士フイルム社の展示ブースではコーポレートカラーの緑色がアクセントカラーに使われている。また、大きな面積のサイン表示で、コーポレートカラーとロゴマークを使う方法もある。イオンは白色のブースに赤紫系のサインを掲げる。
 
 色だけでその企業の識別ができるのは強力なアドバンテージだ。知っている人なら離れていてもすぐに分かる。展示会において存在を知ってもらうのは最低限の要件であり、来場者を安心させ、いち早く納得させる。
 
 しかし、製作において、それらの色の取り扱いは実にデリケートである。プリンターによっては色の再現が微妙に違う場合があるので注意が必要だ。野村順一氏によれば、人は肉眼で10,000,000色の識別ができるそうだから、見る人の中には微妙な違いが違和感を生むかもしれない。
 
 また、2015年から「色彩からのみなる商標(色彩商標)」が認められるようになった。これには、色だけで商品や企業が識別できるべきという考えがある。したがって、商標登録された色彩は、多くの人が認めている色だともいえるだろう。例えば、色彩商標の第1号となったトンボ鉛筆の消しゴム(MONO)の青、白、黒やセブンイレブンの橙、緑、赤といったストライプなども展示ブースのカラーリングで有効に働くに違いない。逆にいうと、シンプルなラインだからといって、商標登録された配色を他の企業で使用するのは避けなければならない。中いは単色だけで登録された色彩も多いので、メインカラーとして使う場合、よく考えた方がいいかもしれない。

(2)展示会コンセプトに沿ったカラーリング

  展示会の企画に沿ったカラーリングによるイメージづくりも行われる。例えば、カラーリングだけでも、ナチュラル、クリーン、リラックス、真面目といった控えめなイメージづくりから楽しい、遊べる、賑やかといったポジティブな空間イメージの表現ができる。
 
 
 これは、色に対する心理的影響によるものである。色彩心理について、これまでいくつかの研究がされており、色の抽象的な意味付けがなされている。例えば、『色の博物誌』よれば、ピンク(赤色)は「血を連想させ、生命を具現する色。愛と勇気を示す、熱い色。激しい感情を喚起する攻撃的な色彩」とある。色彩心理学でも赤は、強い感情を呼び起こす明るく暖かな色。赤は愛、暖かさ、そして快適さにつながる一方で、興奮や強烈な感情を生み出す強烈な色、または怒っている色とも見なされる」そうだ。
 
 また、野村順一氏によれば、青色は心理的に時間を進め、赤色は時間を遅らせるという。青味緑は「時間を過小評価し、実際の時間経過が2時間でも1時間と評価」し、赤色はその逆になるそうだ。
 
 日本も外国も赤色のイメージは似ているが、色に対する感情は、お国柄や環境、使い方ににより人それぞれに異なるので、それが全てとは言えない。だが、展示会のカラーリングにおいて、いくらかの参考にはなる。
 
 それよりも、展示会のブースでは何色かの色を組みわせる「カラーコンビネーション(配色)」が多く用いられる。色相対比・明度対比・彩度対比・補色対比といった方法で色を組みわせ、その面積比率により色の調和を図る方法だ。50:50だと逆効果になる恐れも高いので、メインカラーとサブカラー、スポットカラーを決めてバランスよく調整される。
 
 そうした配色の中で、展示会で最も多く使われる手法は無彩色との組みわせだろう。白と黒は色の仲間に入っていないので、単色技法ということになる。例えば、atelier522社によるkoester社のブースデザインは白を基調とし、赤のラインを走らせたインテリジェンスな印象のデザインだ。素晴らしい面積対比だと僕は思う。 また、 Continental - Exposibram というタイトルによるContinental社の黄色と黒の組みわせは配色の中でも最も目立つ技法であり、スタンドアウトな点で優れている。黄色はContinental社のブランドカラーのようだ。
 
 白を基調にしたブースは明るく広い空間をつくり、クリーンな印象を与える。だが、白だけで簡単に作ると安くっぽくなるし、印象が薄い。しかし、背景の色数が少ないほど商品は目立つ。白はその代表格だが、デザインを踏み違えると個性が出しにくい。Ueberholz社による「Blomus GmbH社」の白い展示ブースはシルエットとの組み合わせにより魅力的なブースをデザインした。全体を白でまとめ、ムービングを使って布生地(white scrim)に影を投影させ、白とグレーのト ーン対比で変化をつけ、アイキャッチとしている。Ueberholz社のデザインは高い評価を受け、EXHIBITORによれば、このShadow Playだけでなく、白を使い整頓されたモダンな印象のホスピタリーゾーンも良かったという。
 
 それに対して黒い展示ブースはどうなのだろうか?黒に対する心理学な印象は悪や死といったマイナスイメージと同時に力の指標や洗練されたイメージがあるようだ。
 色の好みという観点からいうと、黒の人気は高くない。原色と無彩色の七つの色から選ぶ『諸文化圏での嗜好順位(1973)』では6位か7位だった。(『色の博物誌』)2013年にオランダ人を対象にした調査でも、18色の中で13位だったという。だが、男性の27%が青色の服が好きと答えたのに対し、女性の40%が黒い服が好きと答えている。性別や年齢、使い方、お国柄によって色の好みや印象は異なる。だから、黒いブースを見て、近づきがたい印象を持つ人もいれば、その存在感や魅力に引き寄せられる人もいる。
 
「未来」で検索した未来のイメージ
Photo by Robynne Hu on Unsplash
 
 例えば、Dosen Exhibition社による黒でまとめられたハードエッジな展示ブースはとてもクールな印象がする。出展社であるASAKANET社は、僕らが未来予想図に描くていたような「何も無い空間に美しい映像や物体を表示する」ASUKA3Dという最先端の画像技術を持っている。未来を象徴する色は何色なのだろうか?アドビーストックで「未来」のイメージを検索すると、黒みがかった青色が多く見られる。青色はきっと光を描こうとしたに違いない。恐らく、未来は光であり、それにふさわしいのが黒というのが、クリエイターたちのイメージだろう。そう考えると、ASAKANET社の展示にふさわしい色はやっぱり色の領 域外とされるエクストリームなブラックと光なのかもしれない。
 
 
 あまりに有名な「ホイラーの法則」に中に「ステーキを売るな、シズル(Sizzle)を売れ」というマーケティングの考え方がある。商品よりもジ ュージューという音を伝えた方が売れるという、思わず納得させられる考え方だ。展示会ブースデザインにおけるシズルとは来場者たちが抱く「期待感」という言葉に換言できるかもしれない。そうなると、その期待感は展示ブースの色やカタチに込められる。展示会ブースのカラーリングは重要な役割の一端を担っているといえそうだ。
 
 「私が選ぶ色は科学的な理論に基づかない。私の経験的感覚、フィーリング、観察が基本だ。」といったのは、かのヘンリー・マティスだ。実際、全ての展示会ブースのカラーリングが科学的な根拠に基づく訳でない。ディスプレイデザイナーの多くがフィーリングを先行させているに違いない。カラーリングのフィーリングは先天的であってほしいのだが、色彩感覚をもっと磨く必要がありそうだ。
 
ホイラー
Elmer Wheeler - Don't Sell The Steak, Sell the Sizzle

(3)周りのブースが使わない色を選ぶ

   展示会のデザインが始まる頃には、出展者のブース位置やその周辺情報がわかっている。ブース周辺の企業情報をインターネットで調べると、隣にどんなカラーのブースができるのかある程度の予想はつく。予想の情報には、例えばコーポレートカラー、ロゴカラー、ホームページのテイストなどがある。
 
 ある一角が同じような色を使っていたとすれば、個々のブースの違いが曖昧になる恐れもある。それなら、思い切って他が使わないような色を使うというのも一つの手段だ。企業のブランドを損なわない程度であれば。
30周年ロゴ
おかげさまで30周年

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